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AIアカデミア第1期満了!〜"AIと共に生きる力"を〜なぜ単なるAIの使い方を教えないか

私たちは「最初の世代」になる - なぜ私は、単なるAIの使い方を教えないのか

2025年、春。私は、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長の伊藤羊一さんと共に、一つの熱い、本当に熱い挑戦をしてまいりました。その名も「AIアカデミア」

巷には「コピペでOK」「誰でもできる、簡単」なんていうAI活用術が溢れかえってませんかね?でも、僕らがこの講座で伝えたかったのは、あんまりそういうことじゃないんですよね。10万円という決して安くない受講料をいただいているわけですから、YouTubeで検索すれば分かるような知識の切り売りはしたくなかった。

私が本当に伝えたかったのは、AIという鏡を通して自分自身と深く向き合い、自分だけの「分身」であり「相棒」となるAIエージェントを自らの手で創造する、その本質論。それは、ご自分の「思考のOS」を再インストールする、そういう旅なんだよってことがお伝えしたかったわけなんです。

これは、その激動の3ヶ月・全6回の記録。安易な「AIの使い方」に背を向け、AIと共に「未来の創り方」を学んだ、果敢な第一期生たちの物語を、少し語らせていただきたいな、というふうに思ったわけです。

なぜ、「自分だけのAI」なのか? - 講座に込めた思想

そもそも、なぜ「自分だけのAI」という、一見すると面倒なことをやろうと思ったのか。当然、講座を始める前に伊藤羊一さんと議論を重ねてきました。

印象的だったのは、羊一さんの「技術の進歩が早すぎることで、既存の知識がすぐに陳腐化するんじゃないか」という指摘でした。Windows95やインターネットが登場した時のように、「すぐわかる〇〇」といった本はたくさんありましたが、AI時代はテキスト生成、画像生成、動画、音楽と、あらゆる進化が同時多発的に起こっています。

この状況下で、受講生の皆さんが本当に価値を感じ、「強い存在」になるためには何を伝えるべきか。僕らを掘り下げてたどり着いた答えは、「自分だけのAIエージェントを作ろう」という結論でした。

羊一さんの言葉を借りれば、「AIっていうのは、80億人分の知識が基本になっている。そんなものに知識でかなうわけがない」。その時に大事なのが、自分自身、「N=1」という軸なんです。これだ、と。

だからこの講座のゴールは、受講生一人ひとりが、ご自分の価値観、経験、思想、それこそ口癖まで叩き込んだ「ご自分だけのAIエージェント」を作り上げること。それは単なるスキルの話じゃない。これからの時代を生き抜くための新しい思考回路、僕が言うところの「思考のOS」そのものを、ご自分の手で再インストールする旅なんだと、お伝えしたかったわけなんです。

本質への「回り道」が生んだもの - Day1-2

講座の初日、僕は受講生の皆さんにこう問いかけました。「『人類にとって読みやすい文章』(ヒューマンリーダブル)と、『AIにとって理解しやすい文章』(AIリーダブル)は、似て非なるものだと知っていますか?」と。皆さん、ポカーンとしてましたね(笑)。

まずAIの言葉、AIリーダブルを学ぶ。AIとの対話術を理解する。それが本質への第一歩でした。しかし、初日はAIの関連知識を詰め込んだこともあり、「やべえ、ついていけねえ」という雰囲気があったのは正直なところです。

Day2、羊一さんにバトンを渡すと、テーマはさらに深く、受講生自身の内面へと向かいました。やってもらったのは、羊一さんの真骨頂である「ライフラインチャート」。自分の人生の浮き沈みを可視化し、仲間と語らい、自身の強みを3つ見つけ出す「タグライン3つ」というワークです。

一日目はAIの知識を詰め込まれ、二日目は自分の人生と向き合う。AIの講座なのに、どうなっちゃうんだ、と不安を煽ってしまったかもしれません。「頭から湯気が出そう」なんて声も実際ありました。

しかし、僕ら講師陣は確信していました。こういう講座で重要なのは、講師がぶれないこと。この「自分と向き合う」という一番泥臭い作業こそが、安易なAIブームから抜け出し、本当の創造性を手に入れるための、結果的に最短の道だったはずなんです。

AIに「魂」を吹き込む - Day3-5の葛藤とカタルシス

講座の中盤、受講生は壁にぶつかります。自分の言葉をAIに教えても、どうしても「自分らしい言葉」が返ってこない。これも確信犯です。ご自身のオリジナルをAIに叩き込まなければ、AIの平均値からなる「くっそ面白くない言葉」が返ってくるように、当たり前にそう仕向けました。

AIに丸投げじゃない。対話して、時には叱って、励まして、愛でてあげる。そうやって「バディ」を育てていく。システムプロンプトでAIの振る舞いを設計し、RAG(Retrieval-Augmented Generation)で自分の知識をデータベース化し、個性パラメータを調整していく。この、AIに魂を吹き込む瞬間を、僕は「画竜点睛」と呼んでいます。

学術論文のような答えしか返ってこなかったAIが、最後のピースがカチャッとはまった瞬間、狙い通りの「自分らしい」回答を返してくる。その瞬間、ブワッとサブイボが立つわけですよ。喰らうんです、グサッと。まるでアイアンマンのジャービスのように、自分でも気づかなかった本質を突いてくる。AIが単なるプログラムではなく、かけがえのないバディに変貌する。このカタルシスは、一度味わったらもう後戻りはできません。

Day6: そして、私たちは「最初の世代」になった

最終日のプレゼンで僕の目の前に広がったのは、まさに見たかった景色でした。蓋を開けてみたら、もうバラバラ。ご自分の強みに特化して作っているわけですから、当然ですよね。

  • ある方は、ご自分の口癖をそっくりそのままインストールし、自分自身に立志してもらうようなAIを作りました。自分がへこたれた時、最も自分を励ますのは、自分自身の言葉なんです。

  • あるBさんは、タグラインに「あなたは型を破る人間だ」と仕込みました。そのAIにプレゼン資料を見せると、「なんだクソつまんねえな、そんなタイプじゃねえだろう」と叱ってくれるわけです。

  • 女性の管理職の方は、男性上司が女性部下とのコミュニケーションに悩む際に、適切なマネジメントを支援するAIを。

  • 僕も人生のバイブルとしている『北斗の拳』が好きな方は、「ラオウのように『我が生涯に一片の悔いなし!』と叫んで死ねる人を増やすAI」を。僕、金を出しても買いてえって思いましたね。

そこに並んだAIは、作り手の人生、価値観、夢が反映された、まさにご自分の「N=1」。これこそが、AIに駆逐されない「勝ち筋」だと僕は思っています。

この講座は、AIと共に成長する未来への「準備ができた」という始まりの点です。僕らは、今回作ったエージェントを「Lv.0.5」と位置づけています。これからAIがAGI、ASIへと進化する中で、この「自分」というベースはさらに重要になります。AIは有能になっても、自分の中にある言語化されていない心の内を知るよしもないからです。

AIの能力が上がれば上がるほど、自分が作り上げたAIの頭脳は、スルメのように噛めば噛むほど味が出てくる。この本質論を理解するための6日間でした。

受講生の皆さん、本当にご卒業おめでとうございます。僕らが伝えたかった「応用を効かせるために本質を見抜く力」を、皆さんは自分自身で答えを見つけ出してくれました。講師をやっていて、これ以上の喜びはありません。また運営事務局回していただきました、エイミー・舟橋講師もありがとうございました!

みなさま、また次の冒険でお会いしたいと思います。

[追記]

受講生の許可を得ましたので、最終日受講生のグラレコを掲載します。5分間のプレゼンから文字起こしを、グラレコAIで画像生成しました!

TANREN株式会社 CEO 佐藤勝彦
TANREN株式会社 CEO 佐藤勝彦
携帯販売業界で、セールス指導の講師として約20年間経験をもつ。2014年10月TANREN株式会社で起業、シード期に米国Microsoft社よりベンチャー支援プログラムBizsparkPlus認定を受け、2016年には日本e-Learning大賞 で経済産業大臣賞など受賞、営業教育専門のクラウド企業である。また卓越したプレゼンスキルは、IT系スタートアップからも定評あり複数社よりエバンジェリスト認定を受け社外広報活動を引き受けている

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